彼がここにいる理由

反戦なんてかっこ悪いと思ってたよ。甲高いシュプレヒコールをあげながら練り歩くなんて、ほんとたまんないね。それより、渋く低い声で、戦争は必要だ、とニヒルに笑うのがおれのスタイルだった。

0911のときも、恐怖や不安を口にする連中を尻目に、ブッシュすげぇとただただ礼賛。馬鹿どもを支配するには、まず恐怖と不安にどっぷりつけてから、自分が救世主として登場する。ブッシュはそのことをわかっている。頭のいいものがこの世の中を支配するんだ。

今回のイラク攻撃も当然、大賛成。今回はどんな手段で、誰も彼もが否応もなくイラク攻撃に賛成せざるを得ないシナリオを作るのかと楽しみにしていた。

ところが、結果は世界中の反感をあびての戦争突入。あれ?まずここで一度おかしいと思ったが、戦争が始まってしまえばこっちのもの。じゃんじゃん大量破壊兵器を捏造して、ばらまいて見せつければ、国際世論なんてあとからついてくるさ、とまだ楽観的だった。だが、何日たっても大量破壊兵器がみつからないどころか、あさっての方向にミサイルをとばすわ、仲間を打ち落とすわ…。

ここで、おれははたと気がついた。彼らはスマートな殺し屋なんかじゃない。ばかげた信念を信奉するだけの底なしの間抜けだった。やばい。このままじゃ世界が壊されちまう。

おれは走った。何日も飲まず食わずでとにかく走った。そんでもって、ここにたどりついたというわけさ。