雛か蛇か

この話題を思いついたのは、某白装束団体が某女優さんのエッセイを読んで、ポア指令を出したとか出さないとかいうニュースともいえないニュースからなのだけど、元ネタのエッセイをまったく読んでいないので、多分ここに書くことはエッセイの内容とは無関係だと思う。

目の前にかわいらしい鳥の雛と、その雛を狙って近づいてくる蛇がいる。さてあなたはどうしますかという話だ。人情としては蛇を追い払ってやりたい。でも、蛇も自分の生命のために食料を得ようとしているのだから、それを人間の勝手なえこ贔屓で邪魔する権利があるのだろうかと考えて、何もせずに立ち去る。それは、いわば侵すべからざる自然の摂理に従うという立場だ。

それは感情より理性に従うという意味で尊重したい立場だけど、そこには自然を聖なるものと見ること以上に、人間を神格化するような考え方があるのではないかなと思う。つまり、人間と自然を対置するものと考えて、人間は自然を神のように制御する力をもっているという漠然とした捉え方だ。神にはえこ贔屓は許されない。

そうではなく、人間も自然の一部で、一見自然が破壊されているように見えるのも実は自然の姿の変化というべきであり、結局のところ人間も自然の法則に従う動物に過ぎないという考え方も可能だ。それに従えば、人間が雛をえこ贔屓することも自然の摂理だ。

という相矛盾することを考え始めてしまったあなたは、悩んだまま立ち去ることも雛を助けることもできずにいたけれど、上空からすっとタカがおりてきて蛇をくわえていってしまった。とりあえず、悩む必要がなくなってあなたはほっとする。