倫理と処世術

誤解を恐れずに書いてしまうと、他者の価値観を無条件に尊重すべきというのは、倫理の名に値するものではなく、処世術に過ぎないと思う。確かに価値観の対立が無意味な争いを生んできたのは事実で、それを避けるというのは大いなる知恵だと思うのだが、でも、それぞれが自分の領域に閉じこもって信じるものをそのまま好き勝手に信じ続ければいいというのは、とてもペシミスティックな世界だ。

人は変わりうる。山の澄んだ空気の中で今まで一度も見たこともないものを見て、かいだことのない匂いをかぎ、感じたことのない喜びを感じうる、そんな生き物だと思いたい。