まとめ1

おそらくほとんどの日本の人にとって、イラクで人が何人死のうがどうでもいいことなんだろうと思います。戦争に賛成か反対かどうか尋ねられれば、どちらかといえば反対かな、と答えるだけのもので。いえ、決してそのことを責めているわけではないです。ぼくも本質的には同じです。現に、今までぼくの生きている間には世界中で何度も戦争があったわけですが、表立って反対しようと思ったことは一度もないです。

それなのに今回、毎日しつこいくらい戦争のことを書いているのはなぜなのか、今日はそのことをできるだけきちんと書いてみたいと思います。「きちんと」と書いたわけは、これまで書いてきたことはみなぼくの思っていることではあるのですが、扇情的だったり、受けをねらっていたりと、正しく何かを伝えるという目的には適してないからです。

理由をひとことでいうと、戦争に巻き込まれてしまったからです。もちろん、武器を手にとって戦ってもいないし、空爆も受けてないわけですが、戦争をとても身近なものとして感じています、というより感じさせられてしまってます。矛盾や不条理は数々あれど、なんとかバランスを保っているよう見えたまわりの世界がぐらぐら揺れだすのを感じました。それは横揺れと縦揺れの二つがあわさったものでした。

横揺れは、真実をいっても受け入れられない、嘘や誤りがまかり通ってしまうという、論理と倫理の揺れです。アメリカは当初フセイン政権とアルカイダの結びつきを理由にイラクを攻撃しようとしていましたが、その論理に説得力がないのがわかると、一転して大量破壊兵器のことを持ち出しました。そのために提出した証拠はすべてあいまいな状況証拠ばかりで、しかも核開発の証拠として提出した文書が稚拙な偽造と判明するなど、理由はあとづけでイラクの政権崩壊が目的であるのは明白でした。ブッシュ大統領の最終通告でつきつけた要求が、受け入れられるはずのないフセイン大統領の亡命だったことで、むしろ戦争が目的なのではないかという疑いをもつにいたりました(これはあくまで疑いの域をでません)。

というようにアメリカの行動が明らかに論理的・倫理的に破綻しているにもかかわらず、米国民は一貫してブッシュ大統領を支持し続け、日本政府もそれをただ支持するだけでなく、他国の支持を得るために積極的に働きかけまで行いました(無残な失敗に終わりましたが)。米国民には同時多発テロの恐怖があり、日本には北朝鮮の脅威があります。全国民または同盟国(同盟というよりは主従関係ですが)が一体となって行動するには、共通の敵がいる状況はとても都合がいいです。北朝鮮問題については、ブッシュ政権は積極的に問題解決に向けて動こうとしたことはほとんどなく、傍観をきめこんでいます。同時多発テロが自作自演であった証拠は何もありませんが、ただ、事前に情報があったにもかかわらず有効な手段を講じることができなかったということと、ブッシュ政権に近い人たちが同時テロの状況を憂うだけでなく利用する可能性を見出していたのは間違いないことのようです(このあたりの情報はhttp://tanakanews.com/d0305iraq.htmによっています)。

縦揺れは、イラクだけでなく世界中に戦争が拡散されることに対する恐怖です。まず間違いなくいえるのは、テロリストを志願する人たちが増えるだろうということです。同時多発テロで明らかなようにテロには大量破壊兵器は必須ではなく、小型の爆弾を体にくくりつけての自爆テロでも、大きな動揺を与えることができます。アメリカだけでなく日本も標的にされる恐れがあります。またイラクの周辺の国々が不安定化し、一帯を巻き込んだ大戦争に発展する危険性もあります。インド、パキスタン北朝鮮の問題もありますし、その場合、日本が無傷でいられる保障は何もありません。

ブッシュ政権のほんとうの狙いが何なのかははっきりいってわかりません。虐げれたイラク国民の解放なのか、武装解除なのか、石油の利権なのか、イスラエルの保護なのか…。また、彼らがどういう人間たちなのかもわかりません。冷徹に計算された戦略に基づいて行動しているのか、単なる狂信者なのか…。ただひとついえるのは、今回の戦争は彼らが言っているようなよい効果をあげないということです。暴力はただ際限ない暴力の連鎖を生みます。そしてそれに全世界の人間が否応なしに巻き込まれます。

そういう論理や倫理が通じず暴力だけが正義という状況を拒否するのに小さな声をあげたいと思いました。また、何といってもまず真っ先に戦争に巻き込まれて傷つけられるイラクの人々の存在が、ぼくに勇気と粘り強さを与えてくれました。

ほんとうに小さな声です。多分どこにも届かないでしょう。でも、何もしないよりはいいと思ってます。ここまで読んでくれてありがとう。(小さな声で)戦争反対。