1984

ジョージ・オーウェルに『1984』という小説がある。第二次大戦後の1949年に書かれた小説で、当時から見てかなり未来にあたる1984年の状況を予言的に描いている。各家庭には双方向のテレビがおかれ、人々は常にその言動・行動・思考(表情から読み取ることができる)を監視されている。世界は絶え間ない戦争状態であり、テレビに流されるのはB.B(Big Brother)という名の国家元首の語るプロパガンダばかりだ。従来の英語をさらに簡素化したニュースピークという言語が公用語(というよりそれ以外を話すことは許されていない)であり、その中には政府を批判するような語彙が含まれていないので、頭の中に反政府的な考えを浮かべることもできない。主人公ウィンストン・スミスは真理省という過去の歴史を書きかえることを職務とする省庁に勤めている中流階級に属する市民だが、あるきっかけから反政府運動のグループの存在を知ってしまう…

(懐かしい)ユーリズミックスが主題歌を歌って映画化されたりもしたので、知っている人も多いかもしれない。

1984年当時には、荒唐無稽な絵空事だとせせら笑っていたが、ふと考えてみると、今のアメリカはこれにかなり似てきている。おおっぴらに検閲される電話・通信。制限される言論の自由(自由はポテトフライの名前にしかない)。G.Bという指導者によるプロパガンダ。絶え間ない戦争。

唯一の違いは、1984では、B.Bは何年たっても歳をとらず、架空の存在(今の言葉で言うとCG)らしいのだが、G.Bは一応現実の存在だ。マイケル・ムーアによれば、架空の選挙で選ばれた架空の大統領なんだけどね。